令和5年12月定例会 本会議 一般質問(泉議員)
害獣対策について
泉 英之
かつてニホンザルは人里から離れた奥山にしか生息しておらず、当時は希少性の高い日本固有で世界最北の類人猿として保護されるべき動物でした。半世紀ほど前から林野庁による林道の広域化事業が開始され、のり面工事の切土や盛土斜面の安定剤としてイネ科植物の吹きつけが指定品種として採用され、真冬でもなだれた斜面に残る実に猿が群れ始め、工事の延伸とともに猿を人里に導いてしまったと学会で報告されています。
私の住む集落でも有峰林道の工事により25年ほど前から猿が集団で出没し始め、最初はお盆時期の墓のお供え物や軒先につるした大根や柿を奪い、季節を問わずに約1週間に1回のペースで畑や庭の野菜や果物、納屋に保管してある芋やネギなどの物色が常態化しました。
猿は中山間地崩壊の元凶であり、熊のすみかを里に広げた主犯格であることを皆さんに知っていただきたいと思います。
そこで、害獣駆除を定めている鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の概要について答弁を求めます。
農林水産部長
鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律、鳥獣保護管理法は、希少鳥獣の保護、全国的に生息数が著しい増加や生息範囲の拡大が見られる鳥獣の管理、銃などの狩猟のための器具の使用に伴う危険防止を図る狩猟の適正化を柱として、生態系の保護を含む生物の多様性の確保や生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展を目的として制定されている。この法律において国が鳥獣の保護及び管理を実施するための基本指針を定め、この指針に即して都道府県は鳥獣保護管理事業計画を定めることとされており、保護が必要な鳥獣については第一種特定鳥獣保護計画を、管理が必要な鳥獣については第二種特定鳥獣管理計画を必要に応じて定めることができるとされている。
泉 英之
減少している野生動物は保護あるいは維持、増加しているのは管理という文言で減少させなさいという大変シンプルな法律であると理解しています。第1章第2条第3項に、管理とは「その生息数を適正な水準に減少させ、又はその生息地を適正な範囲に縮小させることをいう」と書いてありますが、生息数と生息地は必要十分条件なのか、それぞれ個別に考えて駆除可能なのか見解を求めます。
農林水産部長
鳥獣保護管理法第2条第3項において、鳥獣の管理とは、生物の多様性の確保等の観点から生息数を適正な水準に減少させ、または、その生息地を適正な範囲に縮小させることと定義づけられている。この条文における生息数を減少させることと生息地を縮小させることはそれぞれ独立した管理方法であるとみなされ、おのおのの目的のために啓発や注意喚起等による被害防除対策、出没を抑制する環境づくりを図る生息環境管理、及び生息数の減少のための捕獲を行う個体数管理などの措置が可能であると解釈することができる。
泉 英之
概要説明にもあったように、この法律の第4条で、都道府県知事はこの基本指針に即して、鳥獣保護管理事業計画を定めるものと明記されています。
しかし、今年3月に変更された第5期富山県ニホンザル管理計画では、計画の目的を「ニホンザルの安定的な存続を図り、人とニホンザルとの共生を目指す」とあり、この表現は、本法の保護に該当し、本来の管理──数を減少させるという本法律の趣旨から逸脱した法律違反の策定計画と解釈されるが、富山市としての見解を求めます。
農林水産部長
県が令和4年3月に策定した第5期富山県ニホンザル管理計画においては、管理の目標として、地域個体群の生息範囲が拡大しないよう群れを安定的に維持しつつ、農林作物や生活環境への被害を軽減できるよう生息数を適正な水準にすることにより人とニホンザルとの共生を図るとされていることから、第二種特定鳥獣管理計画並びに鳥獣保護管理法の趣旨にも沿った計画となっている。
泉 英之
富山市は、富山県ニホンザル管理計画に基づき捕獲頭数を指示されていると伺っているが、大山地域では5群団の記載しかないが、実際には7群団が生息しており、県は適正にモニタリングを実施していないのではないかとの疑念を強く感じていることから、正確な個体数調査を実施するよう富山県に進言すべきと考えるが見解を求めます。
農林水産部長
現状に即したニホンザルの管理が行えるよう、地域の協力を得ながら住民からの目撃情報を詳細に取りまとめ、可能な限り動画の撮影を行うなど、個体数や行動状況についての情報収集を行うことで県のモニタリング調査に今後も積極的に協力したい。
泉 英之
まちに熊が現れないよう里山や奥山にドングリや柿の木を植えろと唱える人がいるが、人的に熊の食料を増やすことは今よりさらに個体数の繁殖を促し、周期的に訪れる不作の年には一気に里に下って人的被害は何倍にも拡大するので、里山の環境は自然に委ねるべきと強く訴えておきます。
また2016年、秋田県のツキノワグマはタケノコ取りの熊鈴をつけた2人の住民を襲い、性別が分からなくなるくらいに食べており、大山地域に生息するツキノワグマが生きたカモシカを襲い、食している現場を私は何度も目撃しています。熊は、まずは赤い柿の実を目安に山を下り、近くにある家畜の餌や人の残飯、報道では精米機の米ぬかまでも物色し、その行動域を広げています。
柿の木の現存位置と富山県ツキノワグマ出没情報地図「クマっぷ」の目撃マークは合致していることから、「クマっぷ」ならぬ「柿の木マップ」を富山市が率先して作成し、自治振興会等の協力も仰ぎ、所有者不明のものは持ち主の洗い出しも含め、切除可能なものは来春早々に切除。9月下旬には奥山の木の実の出来が判別できるので、切除を好まない場合は所有者に対し早期に柿の実の回収を促すなど、富山市が指導力を発揮する仕組みをつくるべきと考えるが見解を求めます。
農林水産部長
熊の出没情報が寄せられた場合、その場所に柿の木が存在するケースが多く、柿の実が熊の誘引物となっていることが考えられることから、不要な柿の木の伐採の取組を行う自治振興会を支援し、熊を集落に寄せつけない活動を推進してきた。
細入地域ではこの支援を活用し地域一丸となって柿の木の伐採に取り組んだ自治会があり、令和元年からの4年間で120本の柿の木を伐採されたことを伺っている。この自治会では住民一人一人が熊に対する危機感を持ち、人身被害が発生する前に誘引物を除去しようと、熊の出没地点や柿の木の位置を詳細に示した地図を作成し、集落内をしっかり点検した上で計画的に伐採を実施したもので、地域住民からは、今年の熊を含め、有害鳥獣を見ることが少なくなった、地域ぐるみで協力する体制の必要性が分かったなどの声も聞いた。
不要な柿の木の伐採に当たっては、高齢者が行うには危険が伴うため、コミュニティ活動の一環として近隣住民による共同作業が必要なことや、個人が独自で行っても近隣にまだ柿の木があれば効果が薄く、ある程度広域的に計画を立てて取り組む必要があることから、熊を寄せつけない環境づくりにおける地域の役割は重要であると考える。
実際に柿の木の伐採を行うに当たっては、巡回や聞き取りにより地域において柿の木の箇所図等を作成し、優先順位をつけるなどして計画的に実施していただき、その活動に対し支援を行うことで地域ぐるみで熊対策に取り組む体制づくりを推進したい。