令和3年12月定例会 本会議 一般質問 (泉議員)
「ひとつの富山市」として
泉 英之
旧富山市における固定資産税の歳入81.6%に対し、歳出は平均すると79.8%で、1.8ポイント歳入より歳出が下回り、その1.8ポイント分の旧富山市の固定資産税増収分が旧郡部の投資に回っているとの論拠になっていました。
しかし、この歳出の数字には、北陸新幹線誘致に関わる富山駅周辺整備事業額が加算されていないので、頂いた資料に基づき、改めて算出したところ、平成27年度の87.1%を筆頭に、最盛期は83.2%となり、旧市歳入率の81.6%より1.6ポイント高いことが判明しました。
旧富山市の歳入増加分は旧富山市の歳出額に回り、旧郡部から上がった税収分も旧富山市につぎ込まれているという逆流現象となっており、データの切り取る位置加減で論拠が180度変わってしまう危うさを露呈しています。
数字はうそをつかないので、少なくとも富山市中心部政策から生まれた固定資産税収増によって中山間地等への投資的予算に充てられているという論拠はただの思い込みにすぎなかったこととなります。
中心部偏向政策を肌で感じる例を幾つか挙げると、76億円もの費用で着工された中規模ホールにヒ素の処理費5億円が専決処分されたこと、一方、6年間も通行止めにより、国の補助金を活用することで僅か9千万円で実現できる瓶岩橋再建要望を将来の維持管理費用を理由に否定しながら、12億円とも15億円とも言われる歳出による呉羽丘陵フットパスのつり橋工事は着工になっている。牛岳温泉や白樺ハイツは民営化、縮小され、立山山麓スキー場には3年で5千万円の借入金返済が実現できなければ廃止の方向性を示唆されています。
中心部政策は理屈がつけば予算化され、郊外、中山間地の要望は遅々として進んでいません。
森前市長の政策に対して是々非々にて選別する必要もあると考えますが、来年度からの5年間における郊外や中山間地域に対する税の還流について市長の見解を求めます。
藤井市長
これまで公共交通を軸とした拠点集中型のコンパクトなまちづくりを政策の中心に据え、雇用や福祉、教育、環境、文化などの都市の総合力を高めるための施策に取り組んできた。こうした重層的な取組を行ってきたことにより、企業経営者や従業員とその家族などを含め、多くの方から選ばれる都市になってきたと考えており、人口動態では、平成20年以降、13年連続で転入超過となっている。県外からの転入超過が平成24年以降、9年連続で続いている。
県の地価調査では、全用途の平均変動率が平成26年から8年連続で上昇しているところで、地方自治体の固有財源である固定資産税は、平成27年度以降、5年間で約8%増加している。
コンパクトシティ政策の結果、財源が生み出されたことによって、本市では、棚田の荒廃を防止するための夏期湛水事業や浸水被害を軽減するための水田貯留事業、大規模耕作放棄地の再生とエゴマの6次産業化支援、土地改良事業における市の上乗せ補助の実施による農家負担の軽減、おでかけ定期券事業の拡充や、まちなかや公共交通沿線といった居住推進エリア以外を対象としたふるさと回帰リフォーム等補助事業の実施など、郊外や中山間地域において市独自の取組が実現可能となっている。
税の還流を継続させていくためには、税収を確保することが必要不可欠であり、引き続きコンパクトシティ政策を継続し、深化させていくことにより、選ばれるまちとして転入超過を維持し、さらなる民間投資を市内に呼び込むことが大切であると考える。
第2次富山市総合計画後期基本計画案では、郊外部や中山間地域の振興に関する施策の方向として、1つに、地域の生活拠点の機能強化、2つに、生活交通の確保、3つに、農林水産業の担い手育成及び確保、4つに、有害鳥獣による人身被害や農作物被害の低減、5つに、地域資源を活用した新たな観光資源の創出などを定めており、その方向に沿って、今後、各部局が個別事業に取り組んでいくことになる。
後期基本計画案では、包括的かつ優先的に取り組む施策をネクストステージ重点プロジェクトと位置づけ、スマートシティの構築をはじめ、7つの重点テーマを設定したところであり、このスマートシティの構築については、本市のコンパクトシティ政策の果実を市域全域に広く行き渡らせるための重要なツールになると考えており、来年度中には富山市スマートシティ推進ビジョンを策定したいと考える。
中心部のみならず、郊外や中山間地域、沿岸部に暮らす市民の方々が生きがいと幸せを感じながら質の高い生活が送れるよう、定例会に提案している第2次富山市総合計画後期基本計画に掲げた施策の着実な推進に努めたい。
私も選挙を通して中山間地域や沿岸部、周辺部に政策の恩恵が循環していないのではないかという声は聞いた。コンパクトシティ政策をしっかりと実行して、深化させて、富山市というこの広い市域に稼げる街の核をつくっていくのは今後も大事だと考える。
郊外部、中山間地域や山林、沿岸部も大切な部分ですので、その恩恵を皆さんと感じ合えるように、市域のどこに住んでいても幸せが感じられるように、しっかりと進めたい。