令和4年12月定例会 本会議 一般質問(押田議員)
多発する(農業用用排)水路転落事故に おける本市の安全対策について
押田 大祐
富山県内にて用水路で亡くなる人の数は例年20人前後で、全国総数の15%前後を占め、常にトップにある。
富山県は、耕作地に占める水田の割合が95.3%で全国1位。農業用水路の総延長は1万1,210kmと推計されている。
富山県の用水路は網の目状に平野に張り巡らされており、農業のみならず、防火、消雪、雪捨てなどの用水として用いられ、年間を通して水が流れている。
また、用水路と人が住んでいる場所が近いのも特徴で、水が人と近く、流れが速く、水難事故が発生する要件を大きく満たしている。
本市における農業用水路の転落死亡事故の過去3年間の件数はどれぐらいなのか、また、事故の傾向はどうなっているのかについて伺う。
農林水産部長
本市の農業用水路で発生した転落死亡事故については、過去3年間において、令和元年度が3件、令和2年度が8件、令和3年度が7件で、合計は18件となる。
転落死亡事故の傾向については、1つに、年齢層として、約8割が65歳以上の高齢者であること、2つに、発生場所として、その多くが身近な自宅周辺の幅1メートル未満の末端水路であること、3つに、死亡原因として、転落や転倒した際に負傷し溺死するケースが多いことなどが挙げられる。
本市の特徴である網目状に張り巡らされた農業用水路が身近にある住環境が転落事故に多分に影響しているものと思われる。
押田 大祐
幅1mに満たない用水路、この小さな用水路こそ危ないと言われている。
水深は僅か10cmほどで事故が起こる。末端水路で転倒または転落すると、うつ伏せでは顔が水につかり溺れ、あおむけでは立ち上がる暇もなく水が顔を覆うようにかかり溺れてしまう。一見、危なくなさそうな水路の見た目と高い危険性のギャップが重大事故を生んでいる側面が大いにある。
用水路への転落を防ぐには転落防止柵などのハード面の対策が重要だと考えるが、本市の取組を問う。
農林水産部長
用水路転落事故を未然に防止するには、ハード面の対策に加え、セミハード面やソフト面も組み合わせた総合的な対策を行うとともに、農業用水路の管理者だけではなく、地元住民や県、市などの関係者が一丸となって対策を進める。
令和3年度より、幹線水路や支線水路のみならず、末端水路や転落防止柵同士の隙間に簡易的なチェーンやポールコーンを設置するなどのセミハード面の対策についてもきめ細やかな支援を行っている。
押田 大祐
危険な用水路への転落防止のハード面を講じるのにもおのずと限界が見える。同時にセミハード対策、ソフト対策を展開していかなければならない。
農業用水路の安全管理に関して、今後、土地改良区等が水路の安全対策を講じやすいよう、自治体がリードしていかなければならない。既に県は、末端水路へのハード面の対策には限界があると見て、住民に危機意識を持ってもらうよう啓発活動を進めている。
同様に、富山市でも啓発活動や注意喚起などのソフト面も市民の安全意識の向上に重要かつ有効だと考えるが、本市の取組を問う。
農林水産部長
事故の多くは高齢者が大半で、身近にある住環境で起きていることから、まずは自分を過信しないことや危険な場所になるべく近づかないという意識を持っていただくことなどが重要かつ有効だと考えている。
本市ではソフト面の対策として、「広報とやま」「農政だより」や、市ホームページによる周知、農業用水路転落事故防止に関するポスターや啓発チラシの配布、土地改良区の組合員や地域住民と共に市職員の用水路の危険箇所の見回り、土地改良区で開催されているワークショップへの市職員の派遣を行っている。
押田 大祐
農業用水路での事故を防ぐためには新技術を導入することも有効だ。次世代型農業水利システムを構築することは農業の省力化や生産性の向上を目指すことになるが、これによって転落事故防止にも有効性が認められるとも考える。
改めて、高齢化の進行に伴う農業従事者の事故に次世代型農業水利システム、とりわけ用水路のパイプライン化や自動給水栓などのICT水管理システムが有効であると考えるが、市の見解を問う。
農林水産部長
農業用水路のパイプライン化については、道路の下に用水を通すパイプラインを埋設するものであり、ICT水管理システムは、スマートフォンなどを用いた遠隔操作により夜間、早朝でも給排水を制御できる。
これらにより農業用水の巡回や水管理作業が大幅に軽減されるとともに、用水路に近づく機会が大幅に減少するため、事故の防止効果も期待される。
しかし、農業用水路のパイプライン化については、現在の水路網や水路構造を大幅に変更することに加え、パイプを地中に埋設するといった大規模な工事が必要となる。また、初期投資が発生する。土地改良区内のまとまった地域と農業者の合意形成が必要となることに加え、現状でも大きな負担を抱えている土地改良区に、整備などにかかる手間や膨大な費用負担が伴う。
これらのことから、導入についてはこれまで大規模な土地改良事業に合わせて、国や県、土地改良区などの関係者と共に検討してまいりたい。
押田 大祐
今年9月20日未明から朝にかけて接近した台風14号は、富山市に大きな被害をもたらした。
特に、水橋地区では、午前6時半頃からおよそ1,300戸が停電した。この停電は、台風の強風によって海水が陸地に飛ばされ、電柱の部品回路に付着し、通電不良などを引き起こしてのこと。
順次復旧したが、水橋西部地区のおよそ230戸の最終復旧は午後3時過ぎとなり、9時間程度の停電となった。
この間、住民からは様々な意見を伺った。まず、テレビが見られないので情報が入らない、高齢者だとスマホを持っていないので何の情報も取れない、スマホも充電できない、固定電話も使えない、夏なのにエアコンも扇風機も使えない、オール電化なので料理が作れない、冷蔵庫の中の食品が腐る、冷凍してあったものが解ける、コンビニも停電していたので何も買うことができない、トイレもタンクレスのトイレだと流せないなど、もし車を持っていなければ、言わば孤立に近い状態だった。
今回の件で、いかに現代人が電気に頼っているのかがよく分かった。言い換えれば、電気がないと生活が成り立たないとも言える。今回の9時間程度の大停電で、朝、昼の2食の御飯が食べられない状態となり、何よりその間の不安はかなり大きかった。そこで、今回のように自然災害により長時間の停電が発生した場合、市民生活に大きな影響が出るが、災害発生時に備え、本市では電気事業者等とどのような連携体制を構築しているのか問う。
防災危機管理部長
最大で1,183戸、最長で8時間45分にわたり電力供給が途絶え、不便で不安な思いをされたものと推察している。
まずは電力供給の責務を担う電気事業者において迅速な復旧作業が重要であると考えているが、停電が長時間かつ広範囲に及ぶ場合には市民生活等にさらなる悪影響を及ぼすおそれがあることから、本市は、北陸電力株式会社と北陸電力送配電株式会社との3者による大規模災害時における相互連携に関する確認書を締結し、災害が発生した場合の連絡体制や情報共有すべき項目等を定めている。
電力供給は市民生活や社会経済活動の根幹をなす重要な社会インフラであることから、停電の発生による被害を最小限にとどめ、早期復旧が図れるよう、今後とも努めてまいりたい。
押田 大祐
最後に、自然災害をはじめとした危機事象が発生した場合には防災危機管理部はどのような役割を果たすのか問う。
防災危機管理部長
様々な危機事象への対応において防災危機管理部が果たすべき基本的な役割としては、1つに、被害の発生状況や復旧の見通しなど、正確な情報の把握に努めること、2つに、把握した情報を関係部局と共有し、想定される市民生活等への影響の範囲や程度を見極めるとともに、各部局が実施する支援をサポートすること、3つに、災害に関する情報や本市の支援の内容等を適時的確に地域住民へ提供することである。
防災危機管理部としては、職員一人一人の資質向上と各部局との連携強化に取り組むことで、本市のさらなる危機管理体制強化に向けた先導役として役割を果たしたい。